
古くは煤の粉末を墨として使用していたものが、中国・漢の時代に煤を固めて使用するようになったとされ、また日本では、推古帝の時代(610年)に渡来した僧が創ったのが始めとされています。
鳩居堂では、明治初年に中国(当時の清)に技術者を留学させ、和唐折衷法を創成しました。その墨の色と芳香は他に及ぶものがなく、鳩居堂の墨を使用した書画は表装の際に墨がはげないと評価を得て、誇りとするものです。
その色と香り、質を揮毫されてお確かめ下さい。

ご下命により、明治天皇御用墨として宮中に当社から納めた墨です。

大正時代の墨「國光」
よく洗った硯に新しい水を注ぎ、軽く静かに磨ってください。力を入れ過ぎないよう、ゆっくりと、硯全体に円を描くように軽く磨ります。早く濃くしたいため、あまり力を入れて磨ることは避けて下さい。力で磨ると、墨の粒子が粗くなり、本来の墨色が出ませんので注意してください。
一番大切なことは、湿気を防ぐことです。
墨は、使用後、磨り口の水分を拭き取ってください。濡れたままですと、墨に水分が浸透して、墨のひび割れ・墨の腐食の原因となります。
長期保存の場合は、和紙に包み、桐箱などに納め、湿度が低く温度差の少ない場所に保管してください。
硯石に残っている墨液を、柔らかい紙で拭き取り、硯石を水洗いして下さい。放置しておきますと硯石の鋒鋩の目がつまり、次回ご使用時に発色がわるくなります。
煤に膠を加えて固め、香料を添加して、乾燥させます。原料の違いにより、松煙墨、植物性油煙墨(ごま油、菜種油)、改良油煙(軽油・重油・石油系の煤)などがあります。
- 植物性油煙墨
- 菜種油、またはそれに類する植物油(ごま油)を原料とし、これを燈芯に伝わらせて灯をともし、その細かい炎から採取した煤をコロイド状の膠で練り合わせ、時に香料を加えたりし固めたもの。
- 松煙墨
- 松の樹脂の多い部分を小穴のあるカマドで少しずつ焼いて採取した煤を使用。昔は、障子で仕切った部屋の中で、松(脂の多いところ)を燃やし、障子に附着した煤を集めた。
- 改良油煙
- 鉱物性の原料(石油)を燃やし採取。

- 採煙純植物性油を土器に入れ、燈芯に火をともして、土器の覆をつけて、それについた煤煙をとる。

- 膠溶解原料の膠を二重釜に入れて、長時間煮て、膠の溶液を作る。

- 練り合わせ煤と膠及び香料を混合させ、光沢が出てやわらかい餅状になるまでよく練り上げ、木型に入れ圧縮する。

- 型出し木型より墨を取り出す。この時の墨はゴム状である。

- 灰乾燥木型から取り出した墨を1日目は水分の多い木灰に埋め、2日以後は少しずつ水分の少ない木灰に埋めかえていきます。小さい墨で7日間、大きい墨で20〜30日間程度要します。

- 自然乾燥灰乾燥を終えた墨を藁で編むように、一丁一丁編んで半月から3ヶ月位、自然乾燥させる。
それぞれ、特に大きな違いはないものの、線や色を重視する「かな文字」と「水墨画」には、なるべく上質の墨をおすすめいたします。
また、硯石の大きさにより、墨の大きさを変えるようにしてください。
移ろいゆく一時、季節の彩りを鳩居堂の顔彩に留めおく。いつものおたよりに一筆画き添えてみてはいかがでしょうか。発色の良い鳩居堂の顔彩、ケーキカラーは、貴方の表現を自在に引き出してくれることでしょう。
明治初年、宮城御造営並びに京都御所二条離宮の御営繕に際し製品納入の光栄に浴しましたが、水彩画の流行に伴い多年王座を占めていた英国のニュートン製を駆逐できるまで大成を遂げ、京都大学教授工学博士武田五一氏よりも賞賛せられ、爾来陸海軍鉄道等の諸官省及び各学校よりの注文に忙殺されていました。

顔彩は、顔料にアラビア(糊分)を加え、鉄鉢又は角皿に流し固めたものです。

ケーキカラー(角形絵具)は、顔料にアラピア(糊分)を加え、練り固め乾燥させたものです。

棒絵の具は、顔料にアラピア(糊分)を加え、棒状に練り固め乾燥させたものです。